恋愛アプリから初まる『茶房 わらび野』デート

DATE

洗面台の前に立ち、入念にヘアセットを行う彼の名は健二(32歳、独身)。

早稲田大学を卒業後、大手医薬品メーカーに勤めて、3年前に福岡に転勤で引っ越してきた彼には、当時付き合っていた彼女がいた。

しかし、東京と福岡の遠距離恋愛は長くは続かず2年前に別れてからというもの、これといった出会いもなく、一人の時間が増えていた。

実家の両親からも「結婚はまだか」と言われることも多くなると同時に、周りの同僚が結婚ラッシュにはいったこともあり、彼は徐々に焦りを覚えるようになっていた。

その焦りが、健二を恋愛アプリを初める理由となったのだが、そこで彼は、一人の女性と出会いを果たす。

彼女の名は、明美。
32歳の健二よりも年下の28歳。

生まれも育ちも福岡で、広告会社に勤務している。
彼女もまた、最近3年半続いた彼氏と別れたばかりで、その失恋を引きずっていた。
知人から「前に進まなきゃ」と言われ、知人から勧められ、恋愛アプリを初めることにしてみた。

大人しく、決して社交的ではない彼女は合コンや飲み会は得意ではなく、恋愛アプリは彼女にとって相性がよかったのかもしれない。

そして、そんな奇跡があったからこそ、一つの出会いが生まれたのだろう。

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「よし、これでいいかな」

ヘアセットを終えて、ジャケットを羽織る健二。
そう、今日は健二と明美の初デート。

彼らは恋愛アプリで出会い、それから2週間LINEで連絡を取り合っていた。お互い携帯の画面越しの数枚の写真と2週間のLINEのやりとりから共に安心感を覚えていた。

だからこそ、今日と言うデートが成立したのであろう。
とは言え、デートといっても、どこにいくわけでもなく、明美の好きだというカフェで雑談をして、よりお互いを知るというのが今日の目的である。

初めて2人で出かける際、ディナーを選ぶ男性も多いが、夜の時間を共にすることは、女性に余計な警戒心を与える為、おそらく、健二が夜に誘っていれば明美は考えたかもしれない。

そう思えば、健二の選択は正解だったと言える。

午前11時30分。
健二は車で待ち合わせ場所の博多駅筑紫口に辿りつくと、そこには、黒のスカートに白のインナー、薄手のカーディガンを羽織った明美が待っていた。
春らしく、女性らしい格好の明美に胸がトクンと打つのを健二はハッキリと感じたのだった。

「おはようございます」
「おはよう」

まだまだぎこちない二人の挨拶。
それでも、車を走らせながら会話をする内に、二人の距離は徐々に近くなる。

話をしていく内に、二人とも映画鑑賞が好きで、健二は007について語り、明美はプラダを着た悪魔について語る。先ほどまでのぎこちない雰囲気がウソのようだ。

そうこうしている内に、今日の目的地である篠栗町に到着した。
健二がランチに選んだのは篠栗町にある『文治郎』。

木造建ての蕎麦屋で和の雰囲気がなんとも言えないオシャレ感を生み出している。

「うわぁ…凄く良い雰囲気!」

その雰囲気に思わず明美の声のトーンが高くなった。
どうやら、健二のチョイスは正解だったらしい。

二人が頼んだのは御膳。
お値段2500円と決して安くはないが、季節の山菜料理やてんぷら。
旬の刺身や焼き魚にメインのソバ。こんにゃく寿司とここでしか味わえない料理であり、文治郎が素材に気を遣っていることを考えれば安いのかもしれない。

文治郎の店の雰囲気もあってか、車中よりも会話が弾む。
そんな中でも、健二が水を飲み干せば、直ぐに明美が注いでくれたりもして、こういった細かい気配りに健二は惹かれていった。いや、既に恋になろうとしていたと言えるだろう。

そして、この気持ちは明美の食事姿によって固いものとなる。
運ばれてきた御膳に手を付ける二人だったが、明美の食事作法は実に美しく「美味しい」といった笑顔は健二のハートを射止めるには十分すぎるほどだった。

食事を終えた二人は文治郎の隣に併設されている『茶房 わらび野』に向かった。ここは、カフェからの眺めが絶景の隠れ家的スポットである。

店内には高級感があり、店員の対応も実に見事。
全面ガラス張りの店内からは木々を眺めることが出来て、まるで映画の中のワンシーンのようなシチュエーションを届けてくれる。

そんな素敵な場所で二人が注文したのは、ロイヤルミルクティー。
やわらかい泡が特徴のミルクティーだが、アイスクリームが付いている。

アイスクリームも程よい甘さで、二人とも思わず声を上げた。
明美もすっかり打ち解けて、時に無邪気に笑い、傍から見ればカップルそのものだったであろう。

自分の好きなスポットを調べて、連れてきてくれる健二の思いやりを明美も嬉しく思い「この人なら…」という感情が芽生え始めていた。しかし「あの人と着ていたら…」と元彼のことを思い出し、どこか悲しい気持ちになったのも事実である。

そんな一瞬の表情の変化に…

「どうしたの?」

と、思わず健二が問いかける。

「いえ、なんかたった2週間前にアプリで知り合ったのに不思議だなと思いまして」

慌てて場を誤魔化す明美。
ウソではなく、これは本音だろう。

内気な彼女としては、2週間前に知り合った男性、しかも、恋愛アプリという場所で知り合った男性と二人で出かけるのは今までに経験がなかった。だから、そのような行動を取っている自分に驚きを覚えていたのも事実であり、そういう相手が目の前にいることに対して、どこか健二に運命的なものを覚えていたのかもしれない。

店を出て、二人は店舗の近くを散歩して、再び車に乗り込んだ。
行きのぎこちなさはすっかりなくなり、お互いリラックスした感じである。

-帰りたくない-

健二は心の底からこのように思っていた。
そして、明美の恋愛事情も気になり始めた。

「明美ちゃん、どれくらい彼氏いないの…?」

唐突な質問に思わず明美の表情が曇る。

「……」

「あ、ごめん、変な事聞いたね。」

場の雰囲気が変わったことを健二も察して、慌てて取り繕う。

「いえ、いいんです。実は、別れたのは最近で…」

一瞬、二人の間に沈黙が走ったものの、明美は正直に、元彼と結婚を考えていたことや、引きずっていたこと、そして、知人に押されて恋愛アプリに参加したことを健二に伝えた。

気になる相手に彼氏はいない。
それは嬉しいことのハズなのに、明美が一時は結婚を考えていた過去に健二の胸は苦しくなる。

-もしかしたら、まだ元彼のことを…-

そんな不安も覚え、自分が質問したことを後悔したりもした。

「あの、誤解しないで欲しいのですが、私はもう吹っ切れていますし、今日とかも元彼のことを忘れたいから健二さんと出かけたりしたわけではないですので」

この言葉に少し、健二の気持ちは軽くなる。
二人とも良い大人で、この言葉の意味は双方ともに理解はしていた。

気付けば、市内に戻ってきており、先ほどまで時間を過ごした篠栗町の景色はすっかりとなくなり、喧騒な雰囲気が辺りには溢れ返っている。

「あのさ、良かったら今度映画でも行かない?」

健二は、何とか次の約束をと共通の趣味である映画に誘う。

「映画ですか。いいですね!」

映画の話題によって、車内に張りつめていた重たい空気は軽くなり、再び、二人は何の映画を見るかで盛り上がった。

「じゃあ、また連絡するね」

「私も、見たい映画調べておきます」

こうして、二人の初デートは終わった。
お互いのことを知ることが出来て、良い時間であっただろう。

健二は、少し後悔したかもしれない。
明美がどのように思っていたのか、これから暫く、彼は悶々とした時間を過ごすことになるのだが、その時間が報われることを知るのは、3回目のデートの日であることを彼はまだ知らない。

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